目に見えない世界を信じる【前編】

2018年5月22日WEB法話

道院長である僕が暮らし、米子祇園道院が今活動拠点としているのは境港市です。

境港と言えば「ゲゲゲの鬼太郎」でお馴染みの水木しげる先生の生まれ故郷です。

水木先生のお描きになった妖怪のブロンズ像が立ち並ぶ水木しげるロードは週末には沢山の観光客で賑わっています。

水木しげる先生は戦争で左腕を無くされたり、漫画家としての下積み時代はまさに赤貧の暮らしをしたりと大変な苦労を重ねて来た人でした。しかしその独特な感性と強烈な生きる力で苦労を乗り越えて、やがては漫画家としての大成功されるのです。

今回のWEB法話では、そんな水木しげる先生の遺した「幸福の7カ条」の内のひとつ「目に見えない世界を信じる」について触れたいと思います。

「かつて妖怪が盛んに活動していた昔は、現代にはない充実感のようなものが山野に満ちあふれていたようなのです。その存在感が薄れるとともに、どうも人間はつまらなくなったようです」 水木サンの幸福論より

境港市は三方を海に囲まれています。

北には境水道の対岸に島根半島の山が屏風のように立ちはだかっています。冬の晴れた日の朝には島根半島の山が霧にかすみボンヤリと姿を見せるのですが、その光景は妖気が漂っているようにも見えます。

東には美保湾の先に霊峰大山がそびえています。大山はかつては山岳信仰の聖地とされ、一般の人の入山は禁止されていました。大山そのものが御神体とも考えられていて、今でも「大山さん」として地元の人々から崇められています。雲の隙間から光の柱が伸びている様は神々しさを感じずにはいられません。

西に目を向けると錦海とも呼ばれる中海があり、その先には出雲があります。出雲は古事記の舞台にもなった重要な土地。出雲大社は沢山の人の信仰を集めています。出雲を象徴する八雲と言う言葉の通り、出雲方面に湧き上がる雲が夕陽に照らされて金色に輝いているのを見ると、あの向こうには本当に神様がいるんじゃないのかと思う程美しいものです。

そんな景色を日常的に見ることができるこの土地で暮らしていると神だとか妖怪だとかが本当に存在するんじゃないかと思われます。水木先生が過ごした80年ほど前は尚一層そのように思われたのかも知れません。

目に見えない世界を信じる事は豊かな想像力をはぐくみ、自然に対して畏敬の念を持ち謙虚な生き方に繋がるのではないのかと僕は考えているのです。

後編に続く…