少林寺拳法におけるリーダーシップについて考える

2024年2月23日WEB法話,コーチングコーチング,リーダー,リーダーシップ,少林寺拳法

道院長の森崎です。

少林寺拳法は先の大戦が終わって間もない1947年に宗道臣(開祖)によって創始された「人づくりの道」です。

どのような人を作るのかと言うと「戦争によって荒廃した日本を再建するために行動できる自信、勇気、行動力、慈悲心を合わせ持った人」です。

別の表現で分かりやすく言うと「リーダー」と言うことです。

開祖の理念に共感した多くの拳士がリーダーシップを発揮して全国に道院や支部が広がり、今では海外にも広がっています。

また、それぞれの職場や地域でも持ち前のリーダーシップを発揮して活躍している拳士もたくさんいます。

そこで今回は、少林寺拳法の人づくりの大きなテーマでもあるリーダーシップについて考えてみましょう。

かつて力を発揮した牽引型リーダーシップ

草創期の少林寺拳法の指導者は、厳しい修練を通して心身の鍛錬を重視し、同時に開祖の理念にもとづく「人間形成」という明確なビジョンを掲げて指導をしていました。

また、創始されたばかりで全くの無名の武道であった少林寺拳法を普及させようという強い意志を持ち、情熱的に活動する指導者は強いカリスマ性を持ち、多くの人々を惹きつけました。

このように単なる武道の技術向上ではなく人格形成を目指すという、少林寺拳法の大きな特徴は多くの人々の共感を呼び、拳士数も道院数も瞬く間に増加していきました。

このようなリーダーシップは先頭の機関車がたくさんの車両を力強く引っ張っていく(牽引していく)スタイルから「牽引型リーダーシップ」と言います。

中には行きすぎてトラブルに発展するケースも…

指導者の強いリーダーシップは多くの拳士を育て組織を成長させるために大きく貢献しました。

その一方で周囲から「先生、先生」と持ち上げられ自分が偉くなったとの勘違いや、師弟関係という独特な関係を背景とした感覚のズレから門下生に対する過度な要求などのトラブルに発展する例もありました。

例えば

指導を一部の門下生に任せて、自分は何も指導しない。

プライベートな用事に門下生を強制的に付き合わせる。

門下生に対して高圧的に振る舞う。

など、今で言うパワー・ハラスメントやセックシャル・ハラスメントに当たるトラブルです。

開祖もこれらのトラブルについては大いに問題意識を持っていたようで、指導者の在り方についてたびたび法話の中で戒めていますし、中には改善せず降格処分や破門になった指導者も存在しています。

これらのトラブルが起きないように少林寺拳法グループでは組織を挙げてハラスメント根絶に向けて力を入れています。

指導者の影響力がもたらすもうひとつの問題点

指導者が力強いリーダーシップを発揮して指導をするのは門下生としては大変心強いものです。

しかし強すぎるリーダーシップにはハラスメントとは別の問題もあると考えています。

それは「教えすぎ問題」

指導者の「教えたい!」という想いが強すぎて、全てについて教えすぎてしまうことがあります。

また自分が教えた方法以外の方法は認めないと言うこともあります。

細かなところまで指導者の指示があり、他のことをすると即座に「そうじゃない、それは違う」と言って指導をされる。

僕自身もそんな指導をされた経験がありますが、そのような事が続くと自分で工夫をする意識が育たなくなります。

拳士の心には「先生に教わったことが全て」「先生に言われたことだけをしていればいい」という考えが育ち「自分で考える」「自分で工夫する」という発想自体がなくなります。

だって、そのほうが波風も立たなくて楽だもん。

修練が自己確立を阻害する

少林寺拳法の理念に「自己確立」があります。

自分で考えて行動し、自分の言動に責任を持つことができる人を育てるのも少林寺拳法の人づくりの目的のひとつです。

指導者が教えすぎる、自分のやり方を押し付ける、という行為は拳士の創意工夫を阻害し、自己確立を阻害することになります。

それは少林寺拳法の理念とは真逆の方向に拳士を育てることになります。

問題です。

指導者の役割は変わっていくもの

初級の頃は指導者が丁寧に正しい形を教えることが絶対に必要です。

しかし、どこかの時点で拳士が自分で工夫するということを促すことも指導者の大切な役割であると僕は考えています。

そのためには、拳士が目指す方向に向かって自ら成長できるように支援する支援型のリーダーシップが取れることが重要になります。

さらに今は多様性を大切にする時代ですし、変化のスピードがどんどん加速している時代です。

牽引型と支援型、それぞれ重要なのですが、このような時代には支援型リーダーシップの方が求められているように思いますし、自己確立を目指す少林寺拳法には支援型シーダーシップの方が相性が良いのではないかと思っています。

支援型リーダーシップを発揮して、拳士個人個人の目指す目標の達成を支援しつつ、少林寺拳法の理念にも近づけるように指導をする。

たいへんだ😲

でもやりがいありますね👍

支援型リーダーシップを助けるコーチング

僕は一般財団法人少林寺拳法連盟が主催するコーチング指導者育成コースで3年間コーチングを学んできました。

そのようなこともあり、支援型リーダーシップを発揮するにはコーチングの知識とスキルがとても役に立つということを学びました。

コーチングではプレーヤーズセンタード、つまり指導対象者を主役とする考えを非常に大切にしています。

そしてコーチングには拳士の目標達成を支援する具体的な方法がたっぷりと用意されています。

それがコーチングが支援型リーダーシップに役立つと考える理由です。

コーチングや支援型リーダーシップについてご相談やご質問がありましたらコメントや相談フォームから遠慮なくご連絡ください。