やる気を引き出す4つの方法
こんにちは、プロコーチの資格を持つ道院長の森崎です。
ところで、皆さん「拳士のやる気が今ひとつ足りないんだよなぁ」と思うことはありませんか?
修練には来るんだけど元気がない。
やれと言われた事はやるんだけど、自分から進んでやる事がない。
やる気があるのかないのかよく分からない。
このように後輩や門下生のやる気が見えなくて困っていると言う方に今回の記事は役に立つと思います。
どうぞ最後まで読んで下さい。
なぜやる気が起きないのか?
今までにたくさんの先生に教えていただく機会がありましたが、その先生の指導の仕方によってやる気が起きたり起きなかったりした経験がありますが、皆さんはどうでしょうか?
やる気を引き出す方法を考える前に「やる気が起きなくなる理由」を考えてみましょう
やる気が起きなくなる理由 その1 教えすぎ
指導者としては「相手に教える」「やり方を指示する」と言う事はとても大きな役割です。
特に初心者には丁寧に教えたり指示したりする事が必要です。
しかし、いつまも「教えてばかり」、「指示してばかり」では、相手は自分で考えて行動する機会を得ることが出来ません。
すると、いつの間にか「教えてもらわないと出来ない」「指示してもらわないと何をしたら良いか分からない」という状態に陥ってしまいます。
「教えすぎ」「指示しすぎ」は相手のやる気を低下させてしまう原因となります。
やる気が起きなくなる理由 その2 否定
相手が自分の教えた通りに出来ていない時に「そうじゃない」と出来ていないことを指摘して行動を修正することは大切なアプローチです。
しかし出来ていないことばかりを指摘され続けるとどうなるでしょうか?
はじめは「その通りだな」と肯定的に受け止めていても、否定され続けると徐々に「自分はできないんだ」「才能がないんだ」「向いていないんだ」「どうせ何をやっても否定されるんだ」「たっだらややるだけ無駄だ」と考えがネガティブな方向に向かっていきます。
このことは心理学でいう「ゴーレム効果」や「学習性無力感」というもので科学的に立証されている事実です。
僕自身も同じような経験からやる気が全然出ないという状態になったことがなん度もあります。
修行歴の長い方でしたら誰でも多かれ少なかれ同じような経験をしたと思いますがいかがでしょうか?
一方的に教えられて、いくらやっても認めてくれない。
これではやる気なんか出るわけがありませんよね。
では、どうしたらやる気が起きるのでしょうか?
「やる気」に必要な「自己決定」について
「練習に対するやる気」とは「練習をしたい」という気持ち、つまり「練習をするための動機」と言い換えることができます。
この動機には2種類の動機があります。
外と内、2種類の動機
ひとつは自分の外から与えられる外発的動機というものです。
「指導者からやれと言われたからやる」「指導者が喜んでくれるからやる」という動機です。
もうひとつは自分の中から湧き出る内発的動機というものです。
「上達したいからやる」「練習自体が大好きだからやらずにはいられない」という同期です。
行動に対するエネルギー、つまり「やる気」が強いのは内発的動機であることはイメージしやすいかと思います。
ここに重要になるのが「やるかやらないかを自分で決めるという自己決定」がどれだけあるかということです。
指導者から「やれ」と言われてい練習する外発的動機は自己決定の要素が多くありません。
嫌な練習をさせられるのであれば自己決定の要素は0です。
一方で「練習自体が好きだからやる」という内発的動機の場合は修練日以外にも練習をしていたりしますし、教えられた場合も自分なりに考えて工夫をしたりするものです。
つまり自己決定の要素が多いということです。
逆に自己決定の要素が増えることで「やる気」も上がってきます。
大切なのは自己決定の要素
人間は自分で決めたことについては一貫した行動を取ろうとする性質があります。(一貫性の法則)
例えば「次の昇格考試に向けてこの課題を克服しよう!」と自分で決めたらそれに向けて行動を続けようとする性質がある、ということです。
また自分が決めたことであれば、仮に失敗したとしても「これも勉強だ」と前向きに捉えることができます。
このように「自己決定の要素」と「やる気」には非常に密接な関係があります。(自己決定理論)
つまり「やる気」を引き出すためには相手の「自己決定の要素」を多くしてあげれば良いということです。
やる気を引き出す4つのアプローチ
「自分で決めるとやる気が起きるんだな」ということで「じゃぁ、今日から全部自分たちで考えて練習しろ」というのはちょっと早ガッテンです。
物事には順番というものがあります。
全くの初心者に「自分で考えて決めろ」と言っても考えるための材料も経験もないので、それは無理というものです。
自己決定の要素を引き出すためには指導者の導きが必要です。
最後に相手の自己決定を引き出しやる気を高めるための4つのアプローチ方法を紹介します
指示
「指示ばかりでやる気を下げる」と言いながらいきなり指示ですか!
お思ったでしょう?
確かに指示ばかりでは相手のやる気を下げてしまいます。
しかし、先ほども述べた通り全くの初心者には適切に指示を出すことは必要です。
指示を出す際には以下の点に注意するとよいです。
簡潔明瞭に分かりやすく
理由を添えて
指示は1回につきひとつ
前向きな気持ちになる言葉で
提案
提案は初心者の経験不足を補うためのアプローチです。
少し慣れてきたけれど、まだ自分ではっきりと決めることが難しい拳士に対して指導者が「そろそろ昇格考試を受けてみたらどう?」「今日は剛法と柔法のどっちをやりたい?」などと提案をします。
拳士は指導者の提案を受けて「昇格考試を受けるかどうか」、「今日は剛法をするか柔法をするかか」を自分で自分で選ぶことができます。
指示をされた時に比べて自己決定の要素が少し増えます。
また指導者が自分に聞いてくれたということも拳士にとっては嬉しいものです。
質問
提案の次の段階として質問があります。
「昇格考試はいつ頃受けようと思ってる?」「剛法で上達するにはどんな練習をしたらいい?」と質問をして考えてもらいます。
拳士は自分で考えて答えを出すので自己決定の要素がさらに高まります。
ただし質問をする際は以下の点について注意してください。
指導者が持っている答えに誘導しない。
「なぜ?」という言葉は否定のニュアンスがありますので使いすぎないようにしましょう。
特に「なぜ?」「どうして?」と続けると問い詰められるよなプレッシャーを与えるので避けた方が良いです。
委譲
自己決定の要素を高める最終段階が委譲です。
「昇格考試を受ける時期を自分で決めてくださいね」「剛法の練習方法は自分で考えて工夫してくださいね」などと拳士に任せてしまいます。
拳士は指導者から任されると嬉しいものですから一生懸命に考えて答えを出そうとします。
自己決定の要素はさらに高まります。
指導者は委譲された後の拳士の行動を観察することで拳士がどのように考えて行動するのかを知ることができます。
ここで紹介した4つのアプローチはいくつかを組み合わせて使うことでさらに効果を発揮します。
例えば「提案」と「質問」の組み合わせは以下のようになります。
指導者:「Aくん、そろそろ昇格考試を受けてみたらどうだろう?」(提案)
拳士 :「先生がそう言われるなら受けてみます」
指導者:「それではいつ頃受けようか?」(質問)
拳士 :「そうですね、まだ自信のない技があるので2ヶ月後に受けようと思います」
指導者:「そうか、早速準備をしよう!」
拳士 :「わかりました、頑張ります!」
別のパターンとして
指導者:「Aくん、そろそろ昇格考試を受けてみたらどうだろう?」(提案)
拳士 :「まだ自信のない技が多いので今はまだ考えていません」
指導者:「そうなんだ、どの技に自信がないの?」(質問)
拳士 :「コレとコレと、あとコレとか…」
指導者:「そうか、ではこれらの技が出来るようになったら改めて考えてみよう」
拳士 :「わかりました、頑張ります!」
いかがでしょうか?
4つのアプローチをどのように使うのかは色々と工夫ができると思います。
指導者としての腕の見せ所ですね。
ぜひ試してみてください
もうひとつ大切なこと 承認
かつて開祖から教えを受けたという古参の先生に尋ねたことがあります。
「開祖はあまり教えてくれなかったそうですが、本当ですか?」
この問いに以下のように答えてくださいました。
確かに丁寧には教えてくれなかった。練習して見てもらうと「まだまだだなぁ」と言われる。
さらに練習して見てもらうと「うん、だいぶ良くなったな」と言ってもらえた。
その時の嬉しそうな笑顔が大好きで、それが練習の励みになった。
何か頑張った時に、その成果を認めてもらうこと、つまり承認してもらうことがとても励みになる、ということは多くの人が経験していると思います。
先に述べた4つのアプローチに加えて、要所要所で承認をするとさらに効果が上がります。
まとめ
今回の記事では拳士のやる気を引き出すための方法について紹介して見ました。
やる気を出すためには自分で決定できる要素を増やしてあげることが大切です。(自己決定理論)
そのために「指示」「提案」「質問」「委譲」を組み合わせて効果的に使いましょう。
そして要所要所で「承認」をしてあげましょう。
これからもコーチングの視点から拳士の指導に役立つ情報も紹介していこうと思います。
記事にしてほしいテーマや相談、質問などがありましたらコメントや相談窓口からお寄せください。
お待ちしています。
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