自由組演武に関する注意点
道院長の森崎です
先日開催された鳥取県少林寺拳法連盟の合同研修会の技術修練で「自由組演武に関する注意点」をテーマに技術指導を行いました。
その時の内容をこちらで共有したいと思います。
僕は高校入学と同時に少林寺拳法を始め、これまでに大会やその他の場面で演武を披露する機会が多くありました。
そう言うこともあり少林寺拳法の修行の中でも演武はとても好きな分野であり、それなりにこだわりを持って取り組んできました。
今回の技術指導ではこれまでの演武の取り組みの振り返りとしてとても良い機会を頂いたと考えています。
目的
少林寺拳法の自由組演武のあり方について考察することによって、より充実した演武修練ができるようになる。
少林寺拳法の演武には単独演武や団体演武などの形態がありますが、今回は「自由組演武」について取り上げました。
注意点
今回の講義は僕個人の自由組演武に対する考えを中心に構成しています。
総本山少林寺や一般財団法人少林寺拳法連盟の公式見解ではないということをあらかじめお断りしておきます。
したがって、読む方によっては異論もあるかと思いますが、それも含めて今回の記事がご自身の演武観を振り返るきっかけになれば幸いです。
少林寺拳法における演武の意義
少林寺拳法の修行の中でも演武は重要な役割を持っています。それは昇格考試(昇級・昇段試験)に演武が審査項目として挙げられていることからもわかります。
僕自身は演武に対して以下のような意義があるものと考えています。
技術の理解と習得、そしてダーマの感得
少林寺拳法の技術修練に役立てるための演武の意義として以下のように考えています。
- 法形に対する理解を深める
自由組演武では複数の法形を組み合わせて構成を作っていきます。
構成を作ったり演武練習として何度も法形を繰り返す中で連続した動きの中で法形とじっくりと向き合うことができます。
その過程で法形のひとつひとつの動作の意味や使い方に気がつくことがあります。 - 少林寺拳法独自の身体操作の習得
少林寺拳法の法形のほかに、足捌きや体捌きなどを繰り返し修練することで少林寺拳法独自の身体操作を身体に刷り込むことができます。
運用法の際に自然にその動きができるようになります。 - 自分の可能性に気づく→ダーマの感得
初めはぎこちなかった演武が徐々に上達し洗練される過程で自信がつきます。自分を信じることができるようになる体験を通して「ダーマ」の存在や作用を感覚として理解することができるようになります。
デモンストレーション、プレゼンテーション
何かのイベントなどで演武を披露する際には少林寺拳法デモンストレーションの良い機会です。
そのような時に少林寺拳法の特徴をわかりやすく紹介できるような構成の演武を披露することで、外部の方々に少林寺拳法の魅力を視覚的に伝えることができます。
コミュニケーション
演武の修練を通してパートナーや指導者、あるいは応援してくれる人々とのコミュニケーションを深めることができます。
特に演武のパートナーとは全力で向き合う機会になるので絆が深まる良い機会になります。
自己表現
演武は、これまでに自分が培ってきた少林寺拳法の技術や修練の成果、演武に対する考え、少林寺拳法に対する考えなど今の自分をありのままに表現する良い方法であると考えています。
音楽家が演奏を通して、絵描きが絵を通して、書道家が書を通して、ダンサーがダンスを通して自分を表現するように、我々は少林寺拳法の演武を通して自分を表現することができるのです。
我々はそう言う手段を持っていると言うことです。
武的要素という視点から考えた演武表現の注意点
自由組演武を「武道」としての視点から考えると不要で不自然な動作や表現を見ることがあります。
あまり制約を設けすぎると自由な表現を妨げる事にもなりますが、例えば音楽にも楽曲によってキーやコード進行、テンポなどが決められた中で表現をするのと同じように、演武においても一定の制約の中で表現をすることが求められる、と僕は考えています。
その制約のひとつが「武的要素」です。
僕が演武を見ていて武的な視点で不自然だと思う動作や表現を挙げてました。
- 合掌礼から中段構えなどになる場合に一旦膝を深く曲げる。
- 攻者が守者を掴む際に「掴みますよ」と言わんばかりに手を開いた状態で間合いを詰める。
- また守者はそれをじっとして待っている。
- 倒された際、不必要にいつまでも伏虎構のままでいる。
などです。
「演武」つまり「武を演じる」場合にどのような動きが自然であるのか、不自然であるのか、また必要であるのか、不必要であるのか、と考えるとどうすれば良いのか自ずと答えは見えてくると思います。
また運用法、乱取りの修練が武的要素を理解するためには重要です。
それらの修練を通してリアルな間合いや駆け引きを学ぶことができます。
それらを学ぶことなく演武で表現することは、例えば切腹をしたことがない役者が切腹を演じるのと同じように難しいことなのです。
演武と運用法、乱取りは同等に重要な修練です。
剛法における注意点
- 突きや受けは足捌き(運歩)、体捌き、手捌きを意識して身体全体で行う。
僕は法形を行う場合にも足捌き、体捌き、手捌きの順に重要であると考えています。
足捌き、体捌きを行わずに手の動きだけで受けや突きをしても、確かに見た目のスピードは出るかも知れませんが正しい動作にはなりません。
正しい動きをするためにも身体全体を使うことが大切です。 - 蹴りは引きを意識する。
蹴りは動きが大きいので特に目立つポイントです。
特に初心者は蹴りの引きが弱くて、蹴り足を「下ろす」のではなくて「落ちる」ような動きになることが多いものです。
蹴りをしっかりと引いて下ろし、そこから改めて運歩法を使って移動する。と言う動きが大切です。
柔法における注意点
- 正しくしっかりと攻撃する
攻撃が正しくないと守者の技が正確に掛かりません。
攻者の攻撃が正しくないがために守者の技が掛からず、技が掛かっていないのに掛かったフリをするので不自然な演武になる、と言うことがあります。
守者を信じて、しっかりと攻撃をしてあげることがとても大切です。 - 投げの方向について
投げ技をする場合に守者が攻者を攻者の真横方向に投げようとするケースをよく見ます。
無理をすれば投げられなくもないと思うのですが、少林寺拳法の投げ技は攻者の正面か斜め前方、あるいは斜め後方に投げると無理なく投げることができます。
この時に投げの「崩し、落とし、外し」を意識すると良いのですが、これらの詳細は別の機会に改めて行いたいと思います。 - 投げからの固め技をスムーズに連続させる。
相手を投げてからひと呼吸おいて固め技をするのも良く見かけます。
実際に倒された場合は攻者にとって非常に不利な体勢です。ですから一刻も早く立ち上がろうとするか、必死に反撃をしてきます。
なので投げた後にはその機会を与えないように」スムーズに固め技を行う必要があります。
演武の構成の組立て方
僕が演武の構成を組み立てる際には以下のことを意識しています。
テーマを決める
- どんな技を使うか
不得意な法形、得意な法形、あまり使わない法形などをあえて構成に入れるようにしています。 - 何を表現するか
演武披露の目的によって何を表現するかを考えて構成を組み立てます。
例えば少林寺拳法を知らない方の前で披露する場合はデモンストレーションの意味を込めて少林寺拳法の特徴が分かりやすい法形を多く入れることを意識しています。
スタートから決める
スタートの法形を決めてから次に繋げる法形を考える、と言う組み立て方です。
スタートの法形を行なった後の体勢から連続して行うことができる他の法形を探し出し繋げてみる。しっくりいかなければ他の法形を探し、しっくりいけば採用します。
2〜3個の法形をつなげて、最後に極め法形が決まれば出来上がりです。
ゴールから決める
極めの法形、つまりゴールを決めてからその前の法形を考える組み立て方です。
この法形を行うためにはどんな法形をしたら良いだろうかと考えて組み立てていきます。
まとめ
僕にとって自由組演武は自己表現の手段としての意味合いが強く、その意味でとても興味深い修練方法です。
僕にとって理想的な演武は流れるようなスピード感があって品格のある演武です。
そんな演武ができるようになりたいと日頃から考えています。
皆さんにとっての理想的な演武とはどのような演武でしょうか?
コメントで教えてもらえると嬉しいです。
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