「先」について

WEB法話

合宿での指導員講話は全部で3回あり、そのうちの2回を担当しました。2回目の講話のテーマは「先について」

「先(せん)」とは相手の攻撃に対してどのタイミングで対応するのかを考える学科科目です。
相手の攻撃を受け崩して反撃する「後の先」
相手と同時に動いて反撃する「先(対の先)」
相手の攻撃を機先を制する「先の先」
がありますが、相手の攻撃が始まる前に制する「気の先」が特に大切であると教えられています。

今回の講話ではそれらの語句の詳しい解説は行わず、実生活に応用する為にはどのように考えるのかをテーマとしました。

以下、要旨です。

少林寺拳法の教えはそのまま実生活に応用して考える事ができます。
例えば「当身の五要素」は人との接し方について応用する事ができます。
「当身の間合」は人と付き合う上での距離感について、「当身の角度」は立場に応じた接し方についての教え、という具合です。

「先について」は「危機管理」に応用して考える事ができます。
何らかのトラブルが起きそうな時、起きている時、起きた後にどの様に対応するべきか、という事です。
そしてここでもトラブルが起きない様に事前に予防するという事が大切になります。

危機管理はあらゆる場面で考えなければならない問題です。
例えば皆さんが持っている合宿の資料には緊急時の避難経路や事故発生時の対応フローチャートが掲載されています。
この様に「気の先」の対応として事前に対策を講じておくことによって被害を最小限度に抑える事が可能になります。

また、この様な対策を示すことは組織防衛にも繋がります。もしも何も対策を講じてない状態で事故が発生した場合に組織は大きな損害賠償責任を負う可能性もあるのです。この事は皆さんのクラブにも当てはまる事なので危機に対する対策が講じられているのかを見直してみると良いでしょう。

ところで私は今、高齢者の介護の仕事をしています。
介護の現場では日々様々なリスクと隣り合わせです。
例えば薬関係の事故や転倒に関する事故は命に関わる場合もあるので最も注意を払っています。
万が一事故が発生した場合の対応は重要ですが、事故が発生しない様に各種のマニュアルがあり、事故が発生しない様に絶えず周囲に気を配りながら仕事をしています。

皆さんも大学を卒業して社会に出ると様々なリスクに直面する事になります。経済的なリスクもそのひとつです。
「ワーキング・プア」と言う言葉があるように、給料だけで十分な生活が出来るのかどうか、とい言う問題もあります。
また給料だけで十分な老後の生活資金が確保されるのかと言う問題もあります。

様々なリスクに備える事は大変かもしれません。しかし我々は武道を修行している者として危機に対する感覚は敏感に持っていなければならないと思います。
その為には情報を出来るだけ広い範囲から収集する様にしたら良いと思います。
ニュースなどで何かの事件を知った時に、自分の事として考えて、そうならない様にする為には自分ならどうするだろうかと考える習慣を持つと良いでしょう。